「 愛 」-「 めぐむ 」
爽やかな風に吹かれるピンク色の桜 。
雲一つない快晴 。
私の胸は 、どきどきした 。
溢れるような期待と 、少し飛び出す不安が 、私の心をくすぐる 。
これぞまさに どきどき 、だ 。
校門の前で軽く深呼吸し 、心に決める 。
笑顔 、笑顔 、笑顔 ・・・ !
私の高校生活が今 、始まるんだ 。
第一印象が 、一番大事 。
どんな時でも 、笑顔が私を救ってくれる 。
神様 、どうか私を見守っていてください ・・・ 。
一歩一歩を確かめるようにゆっくり歩き 、校舎の前に貼ってあるクラス表を見る 。
入江愛 、入江愛 ・・・ 。
あ 、あった 。
1- B
これが 、今日から私が生活するクラス 。
うん 、楽しみだなあ 。
「あ 、愛~ !」
その時 、遠くから聞きなれた声が聞こえてきた 。
「瞳~ !おはよう !」
山本瞳 、私の大親友だ 。
私は瞳に駆け寄ると 、2人で抱きしめ合った 。
「やったよ愛 !同じクラスだね~!」
瞳が満面の笑みで私に叫んだ 。
うそ ・・・ ?
慌ててBクラスの表を見ると 、
28 山本 瞳 ヤマモト ヒトミ
きちんと書いてあった 。
「嘘っ !?やったあ !」
小学生の時からずっと一緒にいた仲だったから 、
絶対離ればなれになると思ってた 。
そしてこの高校は 、1~3年生までの間で一度しかクラス変えをしない 。
だから … 本当に嬉しいよ … !
「やったね !愛 !」
隣で瞳が興奮気味に叫ぶ 。
「うん !これからも 、ずっと一緒だよ- !」
叫びながら 、自分もだんだん自覚してくる 。
そっか … これからずっと一緒なんだ 。
「ね !早くクラス行こうよ !」
「そうだね !行こ行こ !」
これから 、楽しい高校生活が始まる … 。
そう思い 、歩き出した瞬間 、
___愛 。
遠くから 、私を呼ぶ声が聞こえた気がした 。
どことなく 、懐かしい声 。
暖かく 、柔らかい中に 、少し寂しそうにも聞こえる … 。
誰だっけ … 、この声 。
思い出せそうで 、思い出せない 。
あ~ 、首まで出てるんだけどな~ … 。
「愛 ?… 愛 !
早く行こうってば !」
「え… ?あ 、ごめんごめん !」
「も~ 、しっかりしてよ?」
瞳に呼び掛けられ 我に返った私は 、また歩き出す 。
「そうだ 愛 !今日 午前中で学校終わっちゃうからさ 、
2人でどっか出掛けようよ !
高校入学パーティー !」
「いいね~!うち 、カラオケ行きたい !
最近歌ってないから 、うずうずしてるんだよね~ 。」
「うちも行きたい !愛は歌上手いからな~ 。」
「そんな事無いよ !そ-ゆ-瞳だって !」
「あはは !いつか2人でバンドやるって 、小さい頃いってたよね 。」
「2人じゃ無理なのに !」
「あ 、ここだ 。
ふう 、緊張するな… 。」
隣で緊張気味に笑う瞳を見て 、私は思う 。
きっと大丈夫 。
たとえ生きているのが辛くなったとしても 、
笑顔でいれば … 、
「神様が 、必ず味方してくれる 。」
「え… ?」
思わず声に出てしまった私を 、びっくりしたように見つめる瞳 。
そりゃあ 、急に変なこといったから 、びっくりするよな ( 笑 )
「… 神様 、かあ 。」
瞳が呟く 。
何かを愛おしむような 、そんな声で 。
「どうかしたの ?」
不思議に思い 、瞳に話しかけると 、
瞳は慌てて笑顔を作る 。
「ううん !何でもない !
神様なんて 、久しぶりに聞いたから 。」
「そっか 。」
「… うん 。
入ろっか !」
「 そうだね !」
2人で手をつないで教室に入った私は 、
あの声の事など 、少しも覚えていなかった 。
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